祖父の夜
おじいちゃんが入院した。
普段、持病のお薬を飲むことすら嫌々で
完全なる医者嫌いである。
わたしのおじいちゃんは75歳。
わたしが初めて会ったのは25年前で
あなたがちょうど50歳の時だったのですね。
母親と父親がわたしを育てられなくなり
一つ返事でわたしを預かってくれた。
わたしの父親はあなたです。
自分は今、結婚だとか仕事だとか
それすらもままならず
毎日を過ごしているわけですが
50歳から赤ん坊を引き取るというのに
よし。連れてこい。と言えることは
尊敬でしかありません。
わたしはあなたみたいな男と一生を遂げたい。そんな人に釣り合う女になりたい。
毎日毎日わたしのことを4時ごろ
元気いっぱいの「今日もよろしく、お願いしま〜〜す!」(丁寧なお辞儀付き)という朝の挨拶で起こすおじいちゃん。
まじで朝早すぎるよ
って思っていたけれど
今はあなたが入院してから
毎日毎日4時ごろ起き
実りも十分になってきた日よけのゴーヤへ
元気いっぱいの「今日もよろしく、お願いしま~~す!」(丁寧なお辞儀付き)という朝の挨拶をしています。
これ幸いに田舎すぎるので5分ほど歩かないと家がない。変人扱いされる恐れはないので実行しておりまふ。
そして、毎日面会に向かいますがおじいちゃんはその挨拶を忘れてしまったね。
あなたが癌だということ。
悲しがったり目をそらしたり
あなたの前でえんえん泣いたり
そんなクズ女みたいなことは
わたしは絶対にしない。
おじいちゃんが今まで不器用なりに
必死に守ってきた最愛の人
あなたの妻、おばあちゃんのことは
わたしと妹が不器用なりに
必死に守って行きます。
だから、
おじいちゃんはわたし達に甘えてね。
それから、おじいちゃん。
わたしは運命を感じる男を見つけました。
その人はわたし以外の女性が忘れられない。
運命を感じているのはわたしばかりで
失望してばかりの日々です。
優しくてひと思いな最高の男なのです。
わたしを時には叱り、時には褒め
自分の頑張りを教えてくれるやつです。
女の子を泣かせるし最低と思うこともあるけれどわたしはその人が好きです。
この世界がひっくり返ってやつがわたしのことを愛してくれたら、おじいちゃんに会わせたいんだ。
そんな素敵な未来が来るのならば、
その時は「孫をよろしく、お願いしま〜す!」って言ってくださいね。
負けないつもりで生きるので
どうぞよろしく、お願いしま〜す!!!
ま。こんな誰にも伝わらないところに逃げているクズ女はお前なってところですけど。